東京地方裁判所 昭和37年(刑わ)4353号・昭37年(刑わ)4635号・昭37年(刑わ)4661号・昭37年(特わ)832号・昭37年(刑わ)6293号・昭37年(刑わ)5858号 判決
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〔判決理由〕第六 法律上の争点に対する判断
被告人氏田、同小田原の各弁護人は斡旋贈収賄罪成立の要件としては、斡旋公務員が「その地位を利用する」ことが必要である旨主張するが、斡旋贈収賄罪に関する現行規定はすでに廃止された戦時刑事特別法第一八条の三、同五あるいは数次に亘り国会において審議されたが結局は成立しなかつた多数の斡旋贈収賄罪に関する法律案等と異り「その地位を利用し」の文言を削除した一方新たに「請託を受け」て斡旋を為すことまたは為したこと、および「その職務上不正の行為を為さしめまたは相当の行為を為さざらしむべく」斡旋を為すことまたは為したこと、という二要件を付け加えた現行法制定の経過に徴するときは、もはや「地位の利用」は本罪成立の要件ではなくなつたものと解せざるを得ない。
なお斡旋公務員の行為を、公務員の地位における場合と私人としての立場における場合とに区別し、後者の場合には本罪は成立しないとする見解があるが、公務員の地位における行為と私人としての立場における行為とは、これを区別する基準はしかく明確ではないうえ、具体的事例においてもこれを区別することはまことに困難であり、さらにまた職務公務員に対し不正行為をなさしめまた相当行為をなさざらしめるよう斡旋するが如き行為は、もともと私人の場合であつても道義的には許容されないものであるところ、法は「全体の奉仕者」として私人に比し特に清廉性が期待される公務員の特殊な身分に着目して処罰の主体をこれに限定したとみることも十分理由があると考えられる。それ故右見解にはにわかに左袒し難い。
よつて、斡旋贈収賄罪が成立するためには、斡旋公務員が「その地位を利用する」ことは必要ではなく、また単に公務員の身分を有することで足りると解するから、右各弁護人の主張は採用できない。(鈴木重光 福島重雄 武藤冬士己)